2023年の台風シーズンが終わった11月に、前回の2019年より4年半ぶりに10回目の台湾へ。アフターコロナで航空券が暴騰。東京から新幹線で大阪より、台北の方が安いなどと言っていた、コロナ前の良き時代はもう戻ってこないのか。今回は、時間帯が悪く安くもないLCCは避けて、現地滞在時間が最大となる便利な空港へ。過去に愛用していた、朝に羽田を発ち夜に台北松山から帰る中華航空を奮発したが、大幅な円安もあってシングルで12000円を超える以前の定宿、日系のサンルート台北は諦め、もっとリーズナブルなホテルを探すことに。
6泊7日で、台北を起点に順行(右回り)で一周、阿里山に立ち寄るスケジュールとし、ネットで事前に台鐵の台北から池上までの自強3000と、阿里山森林鐵路の嘉義から奮起湖までのチケットを確保。日本から買えない阿里山から嘉義への帰りバスは、台北到着日に入手するつもりで羽田空港へ。
※ 鉄道地図は台湾鉄道時刻表(非公式)から借用して一部追記。
※ 最終ページの末尾に関係するリンク先を掲載する予定です。
詳しく知りたい方はご利用ください。
羽田空港国際線ターミナル改め、第3ターミナルに到着。荷物を預けたあと、展望デッキから眺める羽田のご来光。
▲ 羽田空港第3ターミナルの夜明け
搭乗するのはANAではなく、台湾のフラグキャリア、尾翼に梅の中華航空。
▲ 中華航空CI223便
朝からビールも、言えば持ってきてくれる一番搾り。
▲ 中華航空CI223便の朝食
CI223便は高度を下げ、淡水川を越えると台北市街地の真ん中にある松山空港に着陸。荷物を受け取ってから、台湾観光局の海外個人客応援キャンペーン、“遊台灣金福氣”の抽選をしたが、5000元(約25000円)の電子マネーはかすりもしなかった。
▲ 遊台灣金福氣抽選のカウンター
ゴムタイヤの新交通システム、MRT文湖線から南京復興で鉄輪の松山新店線に乗り換え、台北駅に近い中山のホテルへ。1本南を並行して走る板南線に比べると空いている。チャージが残っていた4年前のICカード、悠遊卡はそのまま使えた。
▲ MRT松山新店線の車内
時刻は正午。まだチェックインには早いので、ホテルに荷物を預け、タブレットに入れた海外simの設定に手間取ったが、ホテルのWifiを借りて調べ、何とかネットが開通。中山駅から再びMRT松山新店線で戻り、南京三民へ。
▲ MRT松山新店線南京三民駅
目的地は駅から南へ、徒歩で10分ほどの所にある、“國家鐵道博物館籌備處”。日本統治時代から2013年まで、80年にわたって使われた鉄道工場、台北機廠の跡地。売却して再開発する計画から一転、国定古跡に指定され、訪問時点では鉄道博物館として整備が進行中だった。見えてきたのは車止めか、形鋼にレールと車輪を溶接した手作り感あふれる作品。
▲ 車止め?
その横が、もと台北機廠の入口で、守衛さんが立っている。門の隣では、古い建物の解体工事が進行中。
▲ ここが台北機廠の入り口
門をくぐって敷地内に入ると、フェンスの向こうには車両の展示館になるであろう、足場を組んで工事中の建物。さらに先には、高層ビルの台北101がそびえ立ち、台鉄にとってはJRの汐留や高輪ゲートウェイのように、鉄道の跡地を再開発したかったんだろうなと思わせる好立地。
▲ 台北機廠の向こうに台北101
構内にも別の守衛さんがいて、フェンスから先へは立ち入れない。正確には、訪問時点では月に1回程度、鉄道博物館の車両の展示場になる予定の建屋と保有する車両の公開日があり、國家鐵道博物館籌備處のホームページから応募して抽選に参加し、高倍率を潜り抜けて当選すればガイドツアーで見学することができた。ホームページには、一部を伏せた形で当選者の氏名が掲載されていて、外国人らしき名もあったが、日本から公開日程に合わせての訪台はなかなか困難。
▲ 守衛さんの先は立ち入り禁止
門を入ってすぐの守衛さんの手前に、員工浴室の看板を掲げた建物。ここは工場の従業員の福利厚生施設として、仕事を終えた後、帰宅する前に身体の汚れを落とす大浴場だったところ。1935年の建設で、2005年に台北市政府文化局により、市指定史跡となった。
▲ 員工浴室
一足先に修復と整備を終え、大浴場当時の設備を一部残したまま常設展の会場となり、入場無料で一般公開されていた。入ったところは鉄骨造りの脱衣室。中央にある水道は洗面台かと思ったが、作業服の手洗い場らしい。
▲ 長い作業服の手洗い場
ここの展示は“氤氳時代員工澡堂常設展”。左からキハ07のような流線型の気動車、員工浴室の建物、旧台北駅を描いている。
▲ 氤氳時代員工澡堂常設展
その裏側には鉄道工場だった、台北機廠の大きな模型。
▲ 台北機廠の模型
絵と模型で、1930年代から1940年ごろの日本統治時代に建てられた、台湾の歴史的な建造物を展示。中央は線路が地下化される前、まだ地平にあったころの台北駅舎。右は台鉄のローカル線からMRTに転換した淡水線の終点、台鉄時代の淡水駅舎。
▲ かつての台北駅舎と淡水駅舎
左は臺北保證責任松山信用購買利用組合事務所、右は臺中天外天劇場。
▲ 臺北保證責任松山信用購買利用組合事務所と臺中天外天劇場
左は嘉義税務出張所、中央は臺中豊原呂宅、右は彰化高賓閣。これら以外にも、公共施設から日本人らしき個人宅まで、何点か展示している。
▲ 嘉義税務出張所、中央は臺中豊原呂宅、右は彰化高賓閣
脱衣室から浴槽のある部屋につながる通路。棚には洗面器やシャンプー。
▲ 浴室につながる通路
アーチ型の鉄骨で支える、かまぼこ型天井の浴室には、2箇所に丸い浴槽がある。いずれにも湯は張られていないが、何故か片方の浴槽の上に洗濯物を干している。丸い浴槽の間には、長方形の小さな槽もあり、
▲ 浴室の丸い浴槽
この周辺で身体を洗ったのでしょう。
▲ 浴室の丸い浴槽
浴室の奥は、また脱衣室になっていて、両側から中央の浴室に入れる構造。この円筒形の展示物はベンチレーターだろうか。
▲ もう一箇所の脱衣室
こちらの脱衣室にも展示物がある。ポイント切り替えのレバーと、線路の開いている向きを示す転轍器標識。
▲ ポイント
電気のスイッチ類があるが、その他は何なのか?
▲ スイッチ類
浴槽の配管でしょうか。
▲ 何の配管?
工場の天井の照明でしょう。
▲ 照明
中央のコンクリート造りの浴室部分を外から見ると、こんな形をしている。
▲ 浴室部分
員工浴室の隣の体育館か講堂のような建物。機廠の職員食堂だったらしい。
訪問から1年8か月後の2025年7月31日に、組み立て工場跡に保存車両を展示して、國家鐵道博物館がオープンしたとのこと。週末には、構内を運行する動態保存のディーゼルカーにも乗車できるそうで、次回の訪台時にはあらためて訪問せねば。