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デナリ国立公園駅に到着

列車はネナナ川の流れに沿って、デナリに向かって下っていきます。 地表面を除けば一年中凍結したツンドラ地帯でしょう。沿線の針葉樹の背丈は低くなり、8月の終わりの沿線の紅葉は一段と黄色味を増していきます。

北に向かって流れるネナナ川 紅葉の中を列車はデナリに向かう

やがて、347.7マイル地点でネナナ川に合流するライリー・クリークを高い鉄橋で渡り、大きく右にカーブすると、347.9マイル地点のデナリ 国立公園駅に到着し、ここで 大半の乗客が下車します。アンカレッジからデナリまで、233.6マイル=376km、7時間半。アラスカ鉄道の旅はここで一旦終わります。

列車はしばし停車の後、少なくなった乗客を乗せ470.3マイル地点の終点フェアバンクスを目指して、再び北に向かいます。

     
高い鉄橋でライリー・クリークを渡る       デナリ国立公園駅に到着した列車

デナリで唯一街らしいところは駅の北、公園入口のライリークリークで、リゾートホテルが建ち並んでいます。私たちが宿泊したのは駅の南10kmにあるコテージタイプのホテルで、これら相互と駅近くのビジターセンターの間に無料のシャトルバスが運行されています。距離がありますが、バスは一般道を100km/hで走りますから、所要時間はいくらでもありません。

2004年の7月は例年になく雨が少なかったため、アラスカ北部の数十個所で山火事が自然発生し、基本的には自然の摂理に任せ人為的な消火活動は行わないため、1ヶ月以上に渡って燃え続けていました。デナリ国立公園にも遙か北方からの煙が風に乗って押し寄せ、天気が良くても空はどんよりと霞んでいました。

アラスカ鉄道は、こちらでもご紹介しています

 


ツンドラ・ウイルダネス・ツアー

北米大陸最高峰、マッキンリー山の麓に広がるデナリ国立公園は、かつてはマッキンリー国立公園と呼ばれていましたが、ネイティブアメリカンの 一番高いもの(マッキンリー山のこと)を表す言葉であるデナリに1980年に改称したそうです。国立公園内は日本の四国ほどの広さがあるにもかかわらず、野生動物を守るため1本の道があるだけ、それも入り口から24km地点にあるサベージ・リバーから先は、一般車の乗り入れ が禁止されています。

ムース(ヘラジカ)、カリブー(トナカイ)、グリズリー(ヒグマ)等多くの哺乳類や、100種類以上の野鳥を観察し、自然を楽しむには、公園内を走るシャトルバスに乗るかツアーバスを利用する必要があります。大半の観光客は、ヒーリーのリゾートホテルを起点にした手軽な日帰り観光のツアーバスに参加します。 私たちもデナリの2日目は、早朝からツンドラ・ウイルダネス・ツアーへの参加です。

ベージュ色のツアーバスとダークグリーンのシャトルバス バスの車窓から茂みの中にムースを見つけた

バスに乗ると、まず運転手から非常口や緊急時の脱出法の説明(日本のバスのような非常口はなく一部の窓が窓枠ごと取り外せるようになっていてここから脱出)があり、シートベルトの着用が求められます。

運転手は動物の現れる地点をよく知っていて、周囲に目を配りながらバスを走らせます。乗客も目をこらし、動物を見つけると運転手に知らせ、バスは停車します。8月下旬の デナリの朝は寒く、バスの暖房も余り効きません。森林地帯を走ります。茂みの中にムースを見つけました。みんな一斉にバスの窓を開けてカメラを構え、双眼鏡で観察します。でも寒い!

     
テクラニカ・リバー休憩所の展望台からの眺め       バスの真上に黒い点が 拡大すると熊だ!

やがて、森の木々の背丈が急に低くなり、ツンドラ地帯に入ります。サベージ・リバーのチェックポイントで停車したバスにレンジャーが乗ってきて人数の確認をします。舗装も切れ、バスは砂埃をあげて進みます。

トイレ休憩を兼ねて、最初の下車地点はテクラニカ・リバー休憩所。紅葉が進むツンドラ地帯の川に面した展望台の手すりには、霜が降りていました。

再びバスに乗って進むと、急勾配の途中に先行するバスが停まっています。そのはるか上方に動く黒い点が見えます。グリズリーの棲息する地域に入ってきました。

標高1000mのボリクロームパスからの眺め トクラットで出会った兄弟の小熊

バスが急勾配を登り終えて視界が広がると、ポリクロームパス休憩所です。極彩色の峠と呼ばれるビューポイントで、はるか眼下にマッキンリーの氷河に端を発する水を集めて網目のように流れが交錯する、トクラットリバーとツンドラ地帯 の雄大な眺めです。残念なことに、はるか北方から流れてくる山火事の煙で、グレーの視界になってしまっています。

グリズリーをバスで追いかける 険しい山肌にいるドールシープ 草を食べている

また、この日は残念ながらマッキンリー山が全く見えないため、バスはマッキンリーの展望台ストニーヒルまで行かずに、手前のトクラットで折り返します。

折り返し点で暖かい飲み物で休憩する予定が、突然バスのすぐそばに2頭のグリズリーが現れたため下車できなくなりました。母親から離れたばかりの兄弟だそうです。

         
母熊と3頭の小熊           ポーズを取るホッキョクジリス

バスはUターンをして、もと来た道をグリズリーを追ってゆっくりと戻ります。帰り道でも、車窓からドールシープや親子連れのグリズリー、愛嬌のある仕種のホッキョクジリスなど、自然の姿のままで数多くの動物が観察でき ました。