第一次世界大戦中の1917年、羊番をしていた3人の子供、ルシア、フランシスコ、ジャシンタの前に聖母マリアが出現するという奇跡が起こったとされる場所が、リスボンの北東にあるファティマです。鉄道もローカル線が通じていますが、リスボン、コインブラ、ナザレからのバスが便利です。
ファティマのバジリカ | バジリカの内部 |
聖母マリアの礼拝堂を建てるようにとのお告げに従い、広大な広場の向こうに、高さ65mの塔を持つネオクラシック様式のバジリカがそびえ立っています。5月13日の聖母出現祭には、世界中からの信者でこの広場が埋め尽くされるそうです。
バジリカの内部 3人の子供、フランシスコとジャシンタの墓があり、当時はルシアの墓も用意されていた |
聖母マリアは3つの預言をしたとされ、フランシスコとジャシンタの早い死と、第一次世界大戦の終焉は的中したが、第3の預言はルシアのみが知るとされています。'99年当時には、バジリカの内部にあるフランシスコとジャシンタの墓には花がたむけられ、コインブラの新サンタクララ修道院で祈りの日々を送るルシアの墓所も用意されていました。その後、ルシアも天に召され第3の預言は永遠の謎となったそうです。
バジリカ近くの売店 | 出現の礼拝堂でろうそくを捧げ祈る人々 |
バジリカに向かって左手に、出現の礼拝堂という聖母マリアのまつられている小さなチャペルがあります。そのそばには、大きなろうそくを捧げ、人々の祈る姿があります。
入り口近くの売店では、土産物の他に、このろうそくやいろいろな蝋細工を売っています。足の悪い人は足の形をした蝋細工を捧げると良くなるのだとか。
ポルトガルの首都リスボンは、7つの丘の街といわれ、市内には狭い坂道が多くあり、小さな市電がアップダウンを繰り返す狭い道を走っています。市街地で市電が登れない3ヶ所の急な坂道にはケーブルカーが設けられ、市の中心ロシオ広場からコメルシオ広場に向かう、リスボン一の繁華街にはエレベータまであります。
市街地のエレベータ | エレベータの裏にあるカルモ教会跡 |
これらは、いずれも市電や市内バスと同じCARRIS社の経営で、乗車券は共通、'99年当時は1回160エスクード(約110円)でした。450エスクード(約300円)の1日乗車券もあり、これにはエレベータが描かれています(今は通貨はユーロになっています)。その売場は、エレベータの足元にありますが、ここのおじさんには英語が全く通じません。切符を買うのに苦労しました。
エレベータの上から見たロシオ広場 | 正面はサン・ジョルジェ城 |
登りのエレベーターを降りると、後方の丘との間に橋が架かっており、エレベーターはケーブルカーと同様に移動のための乗り物という位置づけであることがわかります。従って、登りと下りにそれぞれ運賃を払う必要があります。
エレベータの上からは、近くのロシオ広場や向かいの丘の上に建つサン・ジョルジェ城が望まれます。また、すぐ裏にあるカルモ教会跡は、15世紀に建てられたゴシック様式の教会であったが、リスボンが壊滅的な破壊を受けた1755年の大震災で一部の壁を残して倒壊したそうです。震災の記憶を留めるために、今も考古学博物館として当時のままのかたちで残されているとか。
上から見たラブラ線 | ラブラ線のケーブルカーの車内 車体は水平 |
ケーブルカーはロシオ広場の北側のラブラ線と北西側のサン・ペドロ・デ・アルカンタラ展望台へ登るグローリア線の、いずれも広場から徒歩5分程度の市街地2ヶ所と、コメルシオ広場から25系統または28系統の市電に乗って西へ少し行ったビーカの住宅地にあり、いずれも地元住民の足として活躍しています。
乗務員は1人のワンマンカーです。ケーブルカーの距離は短く、途中の停留所もなくあっという間に着いてしまいますが、勾配はきつく、歩いて登るのはしんどい道です。
ラブラ線のケーブルカー2軸単台車 | 下から見たグローリア線 |
ロシオ広場の近くのケーブルカーは、2路線とも同型の車両を使用しており、車体が水平になるように2軸の台車が勾配にあわせて斜めに取り付けられています。従って、ドアは登り側の車端のみ。登り側と下り側では顔つきが異なり、下り側は馬ヅラです。
車内は、写真のような木製ロングシートに白熱灯の照明です。線路は複線ですが、路線の中間のすれ違い部分から下は、互いが相手の線路の間に割り込むガントレットという構造になっています。
サン・ペドロ・アルカンタラ展望台からの眺め | 廃線になった路面電車の線路と安全地帯が残る |
グローリア線の終点で降りたところにある小さな公園が、市内を見渡すサン・ペドロ・アルカンタラ展望台で、向こうの丘にサン・ジョルジェ城が望まれます。展望台のすぐ後ろの急な坂道には、廃止された市電の線路があり、安全地帯、や架線までもが撤去されずに残り、今にも小さな電車がやって来そうな風景でした。
ビーカ線のケーブルカー | ビーカ線には駅がある |
ビーカのケーブルカーは、片側3扉クロスシートで、小型ですが日本のケーブルカーのように車内は階段状になっています。でも、明治時代のマッチ箱の客車のように車内には通路はありません。坂の上では28系統の、坂の下では25系統の市電と接続しており、坂の下側にはリスボンのケーブルカーで唯一の駅らしい設備があります。