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フルカ・オーバーアルプ鉄道

やがて氷河急行は、山間の小さな町ディセンティスに到着します。ここは、レーティッシェ鉄道フルカ・オーバーアルプ鉄道の接続駅です

ディセンティスからブリックまでを運行するフルカ・オーバーアルプ鉄道と、その先ブリックからツェルマット間のブリーク・フィスプ・ツェルマット鉄道は、両者のホームページによると2003年に合併してマッターホルン・ゴッタルド鉄道となることに合意したと伝えられていますが、ここでは私の乗車した当時の社名とします。

全長99.9kmのフルカオーバーアルプ鉄道の氷河急行の走る本線には、2本のレールの中央にアプト式ラックレールが設けられている 区間があり、15分ほどの停車時間を利用してアプト式に対応した機関車に付け替えが行われます。氷河急行の走る本線の最急勾配は1000分の110です。

ディセンティスでフルカ・オーバーアルプ鉄道の機関車に交替 プッシュプル運転用に運転台の付いた客車

側面にフルカ・オーバーアルプ鉄道を表すFO、正面にGLACIER EXPRESS のロゴを付けた真っ赤な電気機関車が連結されます。 この機関車、出力1836kW、粘着運転では最高速度90km/h、ラックレール区間では最高速度30km/hの性能を持っています。

急勾配のため、18両編成の列車は2つに分割され、前半分の7両は先発のツェルマット行きになり、中間の3両の食堂車は編成からはずされて、サンモリッツ行きに併結されて戻っていきます。後ろの8両はしばらく停車後、途中のフルカ・オーバーアルプ鉄道とブリーク・フィプス・ツェルマット鉄道との接続駅、ブリーク行きになって後を追います。

     
アプト式のラックレールの始まるところ       ラックレールにギヤをかみ合わせて急勾配を下る

ディセンティス駅には、この他に一端に運転台を設けたプッシュプル運転の普通列車に使用される客車や、デッキ付きの旧型電気機関車等、興味深い車両がいました。

標高1130mのディセンティスを発車した列車は、氷河急行の最高地点2033mのオーバーアルプ峠を目指します。勾配が急になると2本のレールの真ん中にラックレールを2枚ならべたアプト式の区間が始まり、機関車のギヤをかみ合わせてゆっくりと登ります。

 

アルプスの十字路アンデルマット

急勾配を登りつめると車窓にオーバーアルプ湖が広がります。オーバーアルプ峠を越えると今度は下り勾配。やがて車窓はるか下の方にアンデルマットの集落と駅が見え、右に左にジグザグにラックレールに身を任せて 急勾配を降りていきます。

氷河急行の最高地点近くのオーバーアルプ湖畔 これから降りていくアンデルマット 右に分かれるのは国鉄への連絡線

アンデルマットは東西にフルカ・オーバーアルプ鉄道が走り、その地下300mには南北にアルプスを貫くゴッダルドトンネルがあって、チューリッヒとイタリアのミラノを結ぶスイス国鉄の幹線が通 っているため、アルプスの十字路とよばれています。写真でアンデルマットから右に分岐していく線は急勾配を下ってトンネルのスイス側にあるゲッシェネン駅で国鉄に接続するフルカ・オーバーアルプ鉄道の支線で 、距離はわずか3.8kmですが1000分の179の急勾配があります。

放牧の牛が見つめる中アンデルマットからレアルプに向かう氷河急行 岩を削った氷河が溶けたロイス川は白く濁っている

1982年のフルカトンネル開通以前は、アンデルマットの先のレアルプから再び登りの急勾配となり、標高2160mのフルカ峠を越える路線で、ローヌ氷河の先端が望めることから“氷河急行”の名前が付いた路線でした。

この区間は冬季は雪崩が発生するため、鉄橋を取り外したうえで雪解けまで運休していましたが、レアルプオーバーワルト間 にできた長さ15.4kmのフルカトンネルにより、通年運行が可能となったそうです。今では峠越えを避けるクルマのために、トンネルをはさんだ区間でカートレインも運行されています。

 

ポストバスでローヌ氷河へ

しかし一方では、フルカトンネルにより氷河急行は最高の車窓を失うことになりました。ローヌ氷河を見に行くため、アンデルマット駅で下車し、ポストバス(郵便 も一緒に運ぶ目的でスイスの隅々まで路線を張り巡らせている黄色いバス)に乗り換えて、急勾配とヘアピンカーブが連続する道路でフルカ峠を目指します。

山国スイスの隅々まで結ぶ黄色いポストバス フルカ峠に向かうポストバスの車窓

フルカトンネルで失った雄大な風景を惜しみ、レアルプからフルカ・オーバーアルプ鉄道の旧線の観光路線としての復活が始まりました。1999年には、旧フルカトンネルを越えてローヌ氷河を見上げるグレッチュまで到達しています。フルカ歯車式蒸気鉄道として、かつてこの線で活躍していたアプト式の蒸気機関車をベトナムから買い戻して 使用しています。でも、氷河に触れるには、グレッチュで峠まで登るポストバスに乗り換える必要があります。

マッターホルン・ゴッタルド鉄道はこちらでもご紹介しています。


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