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バンコクへ向かう車窓

再び、編成の真ん中に1両だけ連結されたクッションのある座席のついた車両に乗り込みます。バンコクまで2時間20分。気温の上がった午後は窓から吹き込む風も熱風で、しかも乾期だったため砂埃がひどく、3等車の旅は楽ではありません。ガイドの彼女も、もう列車の旅はうんざりという顔をしています。

サトウキビ畑の中を行くタイ国鉄ナムトク線の車窓

この列車には、欧米人の観光客も多く乗車しています。その大半がタイ人のガイドを連れています。車内を通りかかったタイ人が私に向かって英語で、“I hate Japanese” と言って来ました。ガイドに、“この人、何を言いたいのか聞いてよ”と言ったところ、“アイテニシナイホウガイイヨ”との返事が返ってきました。

死の鉄橋”を含む泰緬鉄道の工事では、連合軍や日本軍の兵士の何倍もの現地人や周辺国の人々の犠牲者が出ています。1992年当時、戦争から半世紀近くが経過していても、カンチャナブリは日本人にとってもタイ人にとっても微妙なところがあります。

南本線をハジャイに向かうタイ国鉄の急行列車

列車は、ノップラドックジャンクションでタイ国鉄南本線に合流します。途中駅では側線に入って、バンコクからマレー半島のハジャイ方面に向かう急行列車を待避します。急行列車の牽引機は、フランスアルストーム社製の電気式ディーゼル機関車で、編成には当時最新型だったステンレス製で冷房付きの客車も組み込まれています。

ハジャイ方面に向かう南本線の急行列車

タイ国鉄南本線の駅は何処もきれいに整備されていて、無人化される前の日本の国鉄時代のローカル駅の雰囲気があります。

太陽が西に傾くころ、列車はトンブリー駅に戻ってきます。駅の手前に機関区があり、もと日本国鉄C56型蒸気機関車のタイ国鉄702号機を見かけました。

タイ国鉄南本線の駅 トンブリ駅近くの機関区で見かけたもとC56の702号

 


アユタヤ

タイ4日目は、朝からバンコクに北にあるアユタヤへ向かいます。日本とタイのつながりは古くからあり、14世紀から18世紀頃までアユタヤには日本人数千人が暮らす町があり、軍事面や貿易面の仕事に従事していたのだとか。川のそば公園に、アユタヤ日本人町の跡の碑が立ち、山田長政の説明文もあります。

アユタヤ日本人町の碑 寝釈迦像

ワット・ヤイ・チャイ・モンコンでは、大きな仏様が横になっています。境内の中央には高さ72mの巨大な仏塔がそびえ、階段を登って中に入ると暗い内部に何体もの仏像が安置されています。

ワット・ヤイ・チャイ・モンコン 本堂の仏様

次は、大仏寺のヴィハーン・プラ・モンコン・ボピット。本殿にはタイ最大の仏像といわれる、高さ19mのプラ・モンコン・ボピット仏が鎮座しています。こちらの大仏様はやっぱり金ピカ。

     
ヴィハーン・プラ・モンコン・ボピット       金色の大仏様

ワット・プラ・シー・サンペットは、15世紀末建造のアユタヤ王朝の守護寺院。広い敷地の中に、18世紀にビルマ軍により破壊され、今はレンガの廃墟が建ち並ぶ姿を見せています。

ワット・プラ・シー・サンペット

最後の訪問個所は、バンパイン宮殿。17世紀にアユタヤ王朝がチャオプラヤ川の中州に築いた離宮です。18世紀にビルマ軍の侵攻によりアユタヤ王朝が滅びた後、放置されていたものをタイ王家が19世紀に復興。タイ式のほか、ヨーロッパ式や中国式の建物があり、現在も王室の避暑地や迎賓館として利用されているそうです。

バンパイン宮殿

 


船でバンコクへ

アユタヤからバンコクへ、チャオプラヤー川を船で戻ります。ランチクルージングで、バンパイン宮殿の近くから乗船です。ゆったりと流れる大河チャオプラヤー。そこには手こぎのボートで川を渡る人、貨物列車の貨車のような何隻もの艀を牽く機関車としてのタグボート、小舟の上で川の中から網をたぐる漁師など、列車からは見えないタイの営みを垣間見ることができます。

チャオプラヤー川クルーズ バンコク郊外

やがて、川がバンコク市内に入ると行き交う船が増えます。右手には前日乗ったタイ国鉄トンブリー駅、続いて左手に王宮、さらに進んで右手にワットアルンが見えるころには、太陽はもう西に傾き、やがて下船地点のオリエンタルホテルが近づいてきます。

チャオプラヤー川クルーズ バンコク市内

バンコクのドムアン空港からユナイティッド航空で成田に帰ります。1992年当時のユナイティッド航空のダグラスDC10はこんな塗色でした。

UNITED Air Line DC10

 


旅のヒント

私が1992年に泰緬鉄道に乗車したのは、バンコクのトンブリ駅からカンチャナブリのクゥエー川鉄橋駅までです。鉄橋や戦争博物館の見学するため、バンコクから国鉄でカンチャナブリを往復するには、平日の場合は朝7:45にトンブリ駅を出発して夕方17:35に戻るこの列車以外に選択の余地はありません。

終点のナム・トクまで往復すると、カンチャナブリで下車して観光する時間がとれません。しかし、泰緬鉄道のハイライトは、カンチャナブリから先にあるそうです。事実、カンチャナブリから大勢の欧米人観光客が乗り込んできて、列車はこの先の方が混雑していました。

戦場に架ける橋を渡ってしばらく行くと、列車は“チョンカイの切り通し”という岩山を切り抜いた狭い所を通り、さらに、先には地形が険しくて線路をひく場所が確保できなかったため、300mにわたり岸壁にへばりつくようにしてクゥエー川の中に設けた木造橋“アルヒル桟通橋”を、ギシギシいう音をたてて最徐行で渡るそうです。

土曜・日曜とタイの祝日には、ホアランポーン駅を早朝6:30に出発し、南部幹線の途中駅で大きなパゴダのあるナコンパトムカンチャナブリで観光のための時間をとりながらナム・トクを往復し、夜19:25にホアランポーン駅に戻るディーゼルカーによる観光列車が運行されます。

バンコク郊外のバスターミナルからカンチャナブリへは、エアコン付きのバスもあります。気温の上がる午後の帰りには、バスを利用した方が楽かもしれません。列車の体験乗車を兼ねた観光バスによるツアーもあります。詳しくは、お役に立つリンク集パンダバスをみてください。

なお、カンチャナブリは欧米人観光客が多いため、地元の人にもバンコクより片言英語が通じるようです。

※ 21世紀になって、終点がナム・トクから短区間、その先の滝のあるところまで延長されたようです。列車の行き先が、英語の時刻表では Waterfall となっています。

 


お役に立つリンク集

これからお出かけになる方や鉄道ファンの方に役立ちそうなリンクをそろえました