35C21000型は、台湾で425両が製造された35トン積みの有蓋車(中国語では篷車)。従来の10トン積みや15トン積みの2軸車に比べて大幅に大型化。高速化とメンテナンス面から、ボギー台車は密封コロ軸受に変更。
▲ 35トン積み有蓋貨車
この貨車のオリジナルは、1971年に日本から輸入した日立製70両の35H2000型石炭用のホッパー車(中国語で煤斗車)。その後に多くが上部にカバー、側面に防熱版を取り付けて砂糖用ホッパー車(中国語で糖斗車)に改造。製糖事業の縮小により、一部を残してセメント会社の貨物積載用に再改造。さらに、一部は石炭用のホッパー車に戻され、ここに展示されているのは他の45両とともに、25BH2000形鉱石用ホッパー車(中国語で石斗車)に改造されたものです。
▲ 鉱石用ホッパー車
35B10000型は、線路の道床のメンテナンスでバラスト散布に使用するホッパー車(中国語では石斗車)。2000年に台湾で25両製造。
▲ バラスト散布用ホッパー車
台車の部分にズームアップ。本型式と従来のバラスト散布用ホッパー車35B100型との違いは、曲線通過性能を向上させるために新式の操舵式台車を採用したこと。日本での操舵式台車の採用は、旧曲線を走行する地下鉄車両の一部だけで、貨車には例がないのでは。
▲ 操舵式の台車
15G8000型無蓋車は、1957年頃に台湾で約1000両製造された2段リンク式の2軸車。貨物列車の高速化に貢献した台鉄の代表的な貨車。オリジナルは側面の中央に観音開きの扉を設け、側柱と妻板の間は上面左右にそれぞれ2枚の側板を固定して、下段側梁の底板と側板の間には、左右にそれぞれ2枚のあおり戸が錠で固定されている構造。1986年に約半数が総あおり戸に改造され、番号の末尾に“A”を追記。この15EG8436A号は1994年に車輪輸送専用車となり、鉄道工場と車両配置区所の間で輪軸関連の備品の輸送に従事。
▲ 2軸の無蓋車
20L50型タンク車は1932年の台湾製で、製造時の型式番号はユソ89号。台湾に現存するもっとも古い3軸タンク車で、当初はタンクの下の部分が横梁の中に入っている構造だったが、その後に中梁を追加してタンクを台枠の上に固定する構造に改造。3軸車は高速走行時に脱線しやすいことから、その後の設計はボギー車に移行。
▲ 3軸のタンク車
35N2000型有蓋ホッパー車(中国語では蓬斗車)は、1974、1979年に250両された輸入穀物のバラ積み輸送車。トラック輸送に切り替わるとともに、ホッパー部分を撤去して長物車に改造されたものも多いとか。
▲ 穀物輸送用ホッパー車
客車や貨車の台車
客車や貨車に使用した台車が並んでいます。苗栗鉄道文物展示館にも台車の展示はあったが、台湾以外の鉄道博物館では台車単独の展示はあまり見かけません。また、日本の国鉄の台車と類似の型式がありますが、同じ型番でも別のものです。台車の中国語は轉向架。
ウイングバネのTR30型は富士重工製。日本の103系や113系電車の台車の枕バネを2列から1列にしたような外観で、電化前の南廻線の普快車に組み込まれていた日本製の35SP32550型客車などで使用。
▲ TR30型台車
上のTR30型とよく似た構造のTR33型も日本製。1970年に日本の複数のメーカが製造した、初期の莒光号の35SP32850型客車で使用。
▲ TR33型台車
オイルダンパ付きコイルばねのTR40型はインド製。1971年にインドでから輸入した、車体中央寄りの2ヶ所に両開き扉のある通勤客車40TP32200型で使用。
▲ TR40型台車
中央の空気バネの枕バネの部分がなくなっているが、TR50型は近畿車輌製。台湾で車体を製造した莒光号40FP10000型と復興号40SP20000型に導入。台湾で一般客車に初めて採用した空気バネ台車。
▲ TR50型台車
A-3型は米国のRide Control Company製。台鉄のほとんどのボギー貨車が使用している標準的な台車。
▲ A-3型台車
TR-16型は、日本統治時代の木造客車時代に最も幅広く使用され、戦後の木造車鋼体化改造で誕生した客車で再利用されました。園内で保存展示されている丸屋根でオープンデッキの客車25TPK2053も履いていて、日本の鋼体化客車オハ60/61系のTR11と同型と思われます。ここに展示されているTR-16型には枕バネの板バネやブレーキがなくなっているのは、高雄機廠での客車の検査時に、一時的に車体を乗せる仮台車に改造されたため。
▲ TR16型の仮台車とスポーク車輪
屋内の展示
屋外の展示を一通り見終わった後は、鉄道文物館へ。
入口にスポーク車輪(中国語で輪輻式車輪)とプレート車輪(中国語で整體式車輪または一體車輪)が並んでいます。説明の看板が出ているのはプレート車輪の方だけで、スポーク車輪については鐵道文物館の中の展示で解説。台鉄の客車・貨車用車輪は、1966年以降の新型車両では“円盤型タイヤ付き輪心”または“一体型圧延車輪”(これが現在の標準)になりました。車輪全体が円盤のような形で、強度が大幅に向上するだけでなく重量が軽減され、耐用年数の長期化による長期使用が可能となり、安全性と経済性の両面から有効です。
▲ 鐵道文物館の前にスポーク車輪とプレート車輪
それでは、鉄道文物館に入りましょう。
▲ 鉄道文物館の入り口
台湾に鉄道が開通した1890年代から2020年代までの、
▲ 鉄道工場の歴史
鉄道工場の変遷の歴史をパネルで紹介。
▲ 鉄道工場の変遷史
潮州機廠の模型。中央の上から左下のライトグレーの部分は潮州車両基地。中央の上から下への幹線道路の右側の敷地が潮州機廠。潮州機廠の中の左下、模型全体では中央の部分が潮州鉄道文化園区。
▲ 潮州機廠と潮州鉄道文化園区の模型
スポーク車輪と台車の平軸受。軸箱の蓋を外して中が見えるようにしています。車軸の直径により10トン輪軸セットと12トン輪軸セットがあり、主に車両の重量により使い分け、1910年代から1960年代に新造された客車や貨車に採用されました。今の車両は、プレート車輪とコロ軸受を使用しています。
▲ スポーク車輪と平軸受
鉄道工場で使っていた工具や治具類。その奥に見えるテーブルと椅子はカフェコーナー。
▲ 工具や治具
各種連結器。
▲ 連結器
タンク車とホッパー車の大型模型。左側の壁には各種貨車の写真を展示。
▲ 貨車の大型模型と各種貨車の写真
客車か貨車に取り付けている器具でしょうか。荷重検知器と右にあるのは三方弁。分解して、構成する部品を並べています。
▲ 荷重検知器と三方弁
“自動軔機装置”とあるのは自動ブレーキ装置のこと。
▲ 自動ブレーキ装置
35SPK2200型復興号客車の大型模型。
▲ 復興号の客車
35FP1000型莒光号客車の大型模型。この2型式が履いていた台車の実物が、屋外の展示車両-1のコーナーにあったTR33。
▲ 莒光号の客車