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旅順開放

旅順は、日露戦争の遺構が残る観光地ですが、中国海軍有数の軍港があるため、一部の観光地を除くと外国人の立ち入りを制限する未開放都市となっていました。旅順の観光は外国人対応の旅行業者を通すこととされていましたが、前夜ネットを見ていたら、2009年の夏に旅順が外国人に開放されたとの情報を見つけ、個人で観光してきたとする大連在住日本人のブログもあります。

念のために在日本国瀋陽領事館大連出張駐在官事務所のホームページで確認すると、いろいろ噂はあるが、領事館が大連市政府に正式に確認したところ開放していないとの回答を得たため、旅順に行く際は従来通り旅行業者を通しツアーに参加することとしています。未 開放地域に立ち入った場合は高額の罰金の他、3〜10日間の拘留という恐ろしい文字も。

旅順口区が勝手に開放したと言っているだけで、大連市は認めていないということのようです。水師営や203高地などの観光地へは すでに8年前に行っているので、今回は大連から列車で旅順を単純に往復してみようと考えました。旅順駅軍港のすぐ近くにあり、カメラを持ってウロウロするとやばい場所ですが、駅だけなら大丈夫だろうと勝手に解釈しました。

時刻表によると、旅順線には早朝に大連発旅順行きの普客と、その折り返しの大連行きの快速、午後に旅順行きの快速と、夕刻にその折り返しの大連行きの普客の1日4往復の列車があります。

※ その後、2010年1月に日本の新聞でも旅順開放の報道がありました。日本領事館大連事務所も開放を確認したが、個人では軍事施設等の判別が困難なことや、旅順口は対外開放されて日が浅いため想定外 の事態が発生する恐れもあり、安全確保の面からも個人観光は避け旅行会社等を通じて団体で観光するようにとしています。


広大な労働公園

まずは、大連駅で切符売り場の当日分発売と思われる行列に並びます。行き先と列車番号を紙に書いて見せたところ、往路の旅順行きは売ってくれたのですが、帰りはダメと言っているようです。全国の切符を売っていると書いてあるのですが。

もし帰りに旅順駅で大連への列車の切符が買えなければ、バスにする手もあるので、とりあえず行きの切符だけを買って、列車の時間まで労働公園に行って時間をつぶすことにします。

春を待つ労働公園の花壇 中日友好の桜の木と石碑

駅の南西の方角に、広大な労働公園が広がります。中国庭園の隣では、日本から贈られたのでしょうか、雪の中で中日友好の桜が春を待っています。土曜日とはいえ人影はまばら。丘の上にテレビ塔が立ち、リフトが動いているのですが誰も乗ってい る人を見かけません。

傾斜地を利用してスキーやソリの氷雪楽園 閑散とした労働公園

公園内の一角に氷雪楽園の看板が出ています。行ってみると、傾斜地を利用して、子供用のスキーやそり遊びができる場所でした。

 


大連から快速列車で旅順へ

発車の30分前頃に大連駅に戻ると、15時発の旅順行きの改札の表示が出ているものの、改札口はしまっており、まだ改札は始まっていません。15分前にやっと改札が始ま りますが乗客はわずかです。ホームに降りると、アメロコタイプのDLが長い編成の客車の先頭に立って発車を待っています。指定席は8号車の4番。

大連駅の列車案内 2階の待合スペースと改札口

編成は、前から機関車、荷物車、14号車から8号車までが硬座車、7号車から後ろが寝台車で、硬臥のほか、軟臥も連結されているようです。昼間に1時間のところを寝台車になんか乗るわけないですよね。この列車のサボは、大連-快速-吉林-快速-蘭となっています。大連を夜行列車で出発する前の車両が空き時間に、旅順を1往復のアルバイトですね。

大連発旅順行き快速列車 サボは大連−吉林−舒蘭

バス1台分にも満たない乗客のために、各車両には1人ずつ車掌が乗務しています。まさか乗客のいるはずのない寝台車にまで車掌が乗務していたかは確認していませんが。

ボックス席が並ぶ硬座車 窓の縁が凍っている

列車は15時定刻に発車。快速ですから、終点の旅順まで60kmをノンストップで58分です。硬座車は、片側4人と通路をはさんで6人のボックス席が並びます。一般に、昼間の快速列車は軟座車を連結していて、もしあれば軟座を選ぶのですが、これは夜行列車のアルバイトのため、仕方がありません。でも、車内はがらがら。指定された席とは関係なく、ボックス席を一人で占領です。

昼間でも窓の周囲は凍り付き、すきま風の防止でしょう、透明のテープで目張りがしてあります。周水子で、瀋陽方面に向かう本線と別れると単線になります。車窓には凍った海、木造船が岸に引き上げられています。

旅順に向かう車窓 凍った海から木造漁船が引き上げられていた

窓際のテーブルにカメラと“地球の歩き方”を置いていたら、通りがかりの乗客が珍しそうに眺めているので、表紙の文字を指差し「大連」ターリィエン、「瀋陽」シェンヤン、「ハルビン」ハルビンと教えてあげました。

彼は興味を持ったらしく、荷物を持って私の隣のボックスに来たのですが、日本語は当然として片言英語も通じず、こちらの中国語は挨拶と数字程度ではお手上げです。それでも、鞄の中から中国語と英語併記の会社案内を取りだして見せてくれました。特殊なバルブ専業メーカの技術屋さんのようです。

旅順に向かう快速列車 旅順駅に到着

大連郊外は、冬枯れの中に農家が点在するのどかな車窓です。その中に突然、超高層住宅の工事現場が現れ、発展する中国の現状に目を奪われます。途中駅に工場への引き込み線や石炭の積み卸し線があり、貨車が停まっています。やがて、中層や高層住宅が増えてくると、10分近く遅れてホーム片面だけの終点の旅順駅に到着です。

直ちに機関車が切り離される 旅順駅舎

すぐに機関車を切り離して、機回り線で大連側の先頭につなぎ替えます。 その先の線路は、踏切を渡って軍港に続いています。

折り返しの普客となって大連に向けて16時25分の発車時間まで27分の待ち時間があるはずだったのが、遅れて到着したため20分足らずになってしまいました。

 

旅順から鈍行で大連へ

駅の出口で切符をもらうようお願いし、外から機回り線上の機関車を撮り、駅舎の写真を何枚か撮って再び駅舎に入り、列に並んで切符を買うともう発車まで10分です。

ホームが片側1面だけの旅順駅に停車中の大連行き普客列車

普客の切符は大連まで4.5元。座席指定はなく、無座となっています。改札口は、列車の最後尾からまだ100mほど後方。もう400m先の列車の先頭まで行って写真を撮って戻ってくるのは厳しいため断念します。

車窓から見える市内には高層住宅も 大連に向かう普客列車の長い編成

帰りは各駅に停車して、大連まで1時間50分を要します。発車時の13号車は私と車掌だけ。途中駅で2人連れの女の子が乗ってきて大連の手前で降りていき、大連まで乗ったのは途中駅からの男の子と私の2人だけ。 こんなに空いている中国の列車は初体験です。平日なら、通勤や通学客がもっと利用するのかもしれません。

沿線には貨車の長い編成も停車していた 到着した大連駅で列車に積み込待ちの荷物

大連駅に到着すると、ホームには列車に積み込みを待つ手荷物が台車に積まれて並んでいます。日本でも、国鉄時代には長距離夜行列車の発着するホームの端では、ごく普通に見られた懐かしい風景です。

大連駅で発車を待つ夜行列車の長い編成

本業の長距離夜行列車の前の足慣らしとして、大連から旅順往復のアルバイトを終えた列車は、これから大勢の乗客を迎えるのでしょう。

大連では、地下鉄網の整備が始まっていますが、今は1日2往復の旅客列車が大連と旅順を結ぶこの路線も、その一環として快軌と呼ばれる近郊電車路線に生まれ変わるようです。何年か後には、 高層マンションが林立する中を複線電化路線を高速電車が数分おきに行きかうことになるのでしょう。