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IRに乗ってデパンネへ

ベルギー2日目は、ゲント駅からフランス国境に近い北海に面した街、デパンネに向かいます。列車の種別は地域急行IR。どんな車両が来るのかなと思ったら、昨日2回乗ったICインターシティーと同じ黒いゴムタイヤの電車です。編成は3両と短く、地元に密着した路線のようで、通勤通学客で結構混雑している中、女性の車掌が2人で手分けして検札にまわります。

ゲント駅にデパンネ行きのIRが入線 終点デパンネに到着

車内に観光客らしき姿はなく、他には東洋人など乗っていません。停車駅毎に徐々に乗客は減っていき、ローカル線は単線区間になったり複線区間でも右側通行になったりと変化しながら、のどかな田園風景の中を進みます。トイレに入っていたら車掌にドアをノックされてしまいました。2度目の検札です。

 

路線長世界一の路面電車

終点のデパンネ駅は郊外の住宅地のようなところ。駅から海は見えません。ホームの隣には、オランダ国境に近いクノック行きの路面電車が乗り換え客を待っています。これが今日のお目当て、オランダ語で Kusttram、英語でCoast Tram。この沿岸軌道は、全長67kmを2時間半かけて走る、世界で一番長い距離の路面電車。運転間隔は、夏は10分、春と秋は15分、冬は20分です。

デパンネ駅で発車を待つトラム 先頭車両の車内

ホーム上の、切符売り場か事務所のようなところから運転士が出てきたので聞いてみると、車内で発券できるとのこと。ベルギーでは、運転手から切符を買うと割高のはずですが、すぐに発車するというので、とりあえずオステンドまで3€払います。

線路幅は狭軌のメーターゲージでしょうか。電車は3車体連接車で、中間車だけはドアの周辺が低床になっています。2車体連接車の間に、後から中間車をはさんだと見受けます。

中間の低床車 デパンネの市街地を走る

終点はループ線になっていて、電車は片運転台でドアも右側のみ。最後部はバスと同様に前向きの座席で眺めが良く、ここに陣取ります。後ろの窓にもワイパーが設置されているのでよく見ると、座席の後ろを開くと簡易運転台が出てくる構造で、回送時等に必要に応じてバック運転もできるようです。

郊外の専用軌道を快走 やっと北海が見えた

デパンネを出ると、トラムは田園地帯の専用軌道を走ります。やがてデパンネの市街地へ、狭い道路の中央に線路が敷設される区間に入り、歩道の幅はしっかりと確保されています。乗客も増えてきます。再び郊外に出ると専用軌道を快走。80km/h程度のスピードは出ているようです。PC枕木の立派な線路の部分は上々の乗り心地ですが、改良の終わっていない区間ではよく揺れること。

工事中のため単線運転 仮設のポイントを渡る 敷石の上にレールが出ている

途中で何ヶ所も線路の工事に出会います。単線運転となり、合わせて並行する道路改修の行われている区間も。単線運転区間の前後には仮設のポイントが設けられています。線路が敷石に埋め込まれている区間では、その上にポイントをかぶせたため、電車は最徐行でレールの一段高くなった部分に乗り上げてからポイントを渡ります。

こんな屋根の付いた駅もあります 新車の試運転でしょうか 5車体連接車

北海に沿って北東に向かって進むトラムの車窓には、小さな街と田園風景が繰り返し、リゾートホテルやカジノも現れます。でも、海岸近くに出ても通りの向こうのマンションの間から、ちらっと海が見える程度です。

前日にゲントで乗ったのとよく似た、5車体連接の部分低床車が試運転をしていました。今後、車両の取り替えが予定されているのかもしれません。


北海に沿って砂埃を巻き上げながら快走するベルギー沿岸軌道の電車

デパンネを出発してから1時間が経過したところで、やっと車窓に北海が広がります。線路の隣は海岸で、風に吹き寄せられた砂が線路内に堆積し、電車は砂埃を巻き上げながら快走します。窓が汚れている原因がわかりました。

 


オステンドの街

Oostendeは、日本語ではオステンドの他にオーステンデと書く場合もあるようです。18世紀にはベルギー最大の貿易港として栄えた港町で、ドーバー海峡を渡って英国と結ぶフェリーも入港します。今ではベルギー最大の海浜リゾートとして、夏には海水浴客で賑わうそうです。

オステンド市内の工事区間 単線運転から複線に戻る トラムのオステンド駅

トラムはオステンドの街に入ってきます。街中でも線路の工事が行われていて単線運転の区間も。デパンネから1時間20分程で、港の近くにあるトラムのオステンド駅に到着です。ここで一旦下車して、市内観光です。

隣の立派な建物はベルギー国鉄のオステンド駅。ブリュッセルからゲント、ブルージュを経由してきた幹線と、ゲントからデパンネへ向かう路線の途中から分岐したローカル線の2路線の終着駅で、カーブしたホームに、客車の一端に電気機関車が付いたプッシュプルのインターシティーが発車を待っています。

国鉄オステンド駅 オステンド駅のインターシティー

オステンド港にはヨットや大型帆船が停泊し、一番奥に係留されている帆船メルカトールは、商船学校の退役訓練船を活用した海洋博物館だとか。

帆船が停泊中 向こうは駅舎 帆船メルカトールは海洋博物館

緑の船は、引退した漁船を活用した博物館だとか。港には、漁を終えた現役の漁船も入港しています。でも、近くに魚を水揚げする魚市場は見つかりません。

実物の漁船を活用した博物館 漁を終えた漁船が入港

 

聖ピーター&ポール教会

港の近くで、空に向かって2本の尖塔が伸びているのが聖ピーター&ポール教会。教会前の広場で、前日まで何かイベントを開催していたのでしょう。舞台装置の後片付け中ですが、教会の写真を撮るには邪魔な存在。

聖ピーター&ポール教会の正面とその内部 聖ピーターの塔

現在の教会は、19世紀末に火災で焼失した後、20世紀初頭に建てられたネオ・ゴシック様式で、中に入ると美しいステンドグラスが出迎えてくれます。教会の背後に独立して建つ聖ピーターの塔は、この時の火災を免れて、今に残る教会の一部だそうです。その形から、“コショウ入れ”と呼ばれているのだとか。

聖ピーター&ポール教会の背面 橋があがってヨットが通る