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“台湾 苗栗鐵道文物展示館”


台湾の西海岸沿いに、第一の都市台北と第二の都市高雄を南北にむすぶ、台湾省鉄路管理局(台湾国鉄)の最重要路線である西部幹線は、台湾中部にある第三の都市台中の前後で、勾配のある山線と平坦な海線に分かれます。台北側の分岐駅、竹南から山線で3駅、特急や急行に相当する自強号や莒光号の停車駅が苗栗(みゃおり)です。

駅前から南西方向へ、線路と立体交差した地下道を抜けると、苗栗鉄道文物展示館があり、台湾で活躍した大小様々な蒸気機関車やディーゼル機関車、客車などが並んで余生を送っています。もと機関区の一部を開放していて、入場無料が嬉しいですね。

▲ 苗栗鉄道文物展示館の全景 2010/11

出迎えてくれるのは、台湾鉄路管理局のキャラクター。廃車になったディーゼル機関車のエンジン部品でしょう。顔はピストン、身体はシリンダライナ、足はコンロッドでできていて、軸受メタルをたくさんつけています。ライナに掃気ポートがあるので、2サイクルですね。

一部にアメリカ製や台湾製の車両もありますが、大半は日本から海を渡り、台湾で活躍して引退した後、きれいに整備されてここで余生を送っています。多くの車両の前にはプレートが立ち、メーカや経歴等が中国語で書かれています。台湾は旧字体のため、日本人なら漢字を拾い読みすれば、理解は容易です。

▲ 台湾鉄路管理局のキャラがお出迎え

まずは、日本のJRと同じ1067mmゲージの台湾鉄路管理局の路線で活躍した車両からご紹介しましょう。

CT150型蒸気機関車は台湾のハチロク。1918年に大阪の汽車製造会社で生まれ、1978年の西部幹線電化まで、旅客列車を牽引し、山線の補機としても活躍しました。カウキャッチャーと小さなヘッドライトがちょっと気になりますが、化粧煙突はオリジナルスタイルで、大正時代の名機、ハチロクそのものです。

▲ 台湾のハチロク CT150型

DT560型蒸気機関車は台湾のキュウロク。1920年の米国 American Locomotive 製で、貨物列車用として1979年まで使用されました。日本の9600型の図面をもとに製造したそうですが、貫禄のある大きなヘッドライト以外にも、どこか大陸を感じるスタイルです。

▲ 台湾のキュウロク DT560型

C-Cの軸配置のR1型ディーゼル機関車は、日本離れしたスタイルですが台枠にHITACHIの文字が浮き出ています。1960年の日立製作所製で1996年まで活躍。西ドイツMANのライセンス生産のエンジンで発電機を駆動し、モーターで走行する電気式。ディーゼルエンジンの定格出力は1420PSで、同時期の日本国鉄DF50の1060〜1200PSより強力です。同型式は、一時期日本国鉄のDF91として、常磐線で試験的に運行したそうです。

▲ 日立製 電気式ディーゼル機関車

B-Bの軸配置のS400型ディーゼル機関車は、1969年の米国GM製で、1997年まで台北の北東にある七堵操車場の入れ換えや区間列車用として使用されました。やはり電気式で、貨車のベッテンドルフのような機関車らしくない台車を付けています。

▲ 米国GM製 電気式ディーゼル機関車

側線には、台枠がむき出しでトラス棒がついた、2両の17m級木造客車が停車しています。1両はオープンデッキで、外にハンドブレーキが見えます。側窓は日本国鉄ナハ22000やオハ31のような3つずつならぶ配置になっていますが、屋根は丸屋根。

▲ オープンデッキの木造客車

車内に掲示してあるプレートによると、車号は25TPK2053。1921年の日本製の参等客車で西部幹線で使用され、1991年に工事用の宿営車となり、1996年に引退。保存価値が認められ、鉄路文物に指定され高雄機廠で修復して復籍、今後永久保存するようなことが書かれています。

車内は、クッションのない木製のボックスシート。同時期の日本国鉄ナハ22000は2つのボックスに3つの窓の構成ですが、窓割りと合わないのはあとでシートピッチを広げたからでしょう 。三等車でも天井には扇風機が付いているところは、さすがに南国台湾です。

▲ オープンデッキの木造客車の車内

隣に連結したデッキにドアのついた木造客車30SPK2502は、車長は短いものの、日本の鋼製客車スハ32にそっくりです。デッキの窓越しにみると、オープンデッキと同じ木製のボックスシートです。側窓は、スハ32と同様に2つずつならび、2窓で1ボックスの割付です。

▲ 丸屋根デッキ付きの木造客車

こちらは車内に入れなかったので、詳細はわかりません。ネット検索で、台湾の方のブログに30SPK2502の車内に掲示してあるプレートを見つけました。1953年台北機廠製の貳等車で、以下は上記25TPK2053と同じことが書かれています。二等車なのに座席は三等車と同じ。これで二等車はありませんね。復元時に座席を間違えたのでしょうか。

▲ 丸屋根デッキ付きの木造客車の車内

この他、側線には工事車でしょうか、莒光号色の鋼製客車や、

▲ 切妻の鋼製客車

窓を開けた有蓋貨車が並んでいますが、展示物か、単に留置しているだけか、よくわかりません。

▲ 各種有蓋貨車

展示車両は定期的に手入れが行われているようで、保存状態はどれも良好です。

▲ 点検整備中(左)と説明のプレート(右)

線路の先には、ターンテーブルも残っています。

▲ 転車台が残っている

車輪を利用したベンチがユニークです。古典的な客車用の台車から空気バネ付きの電車用まで、3種類の台車が展示してありますが、説明がないのでどんな車両が履いていたのかわかりません。

▲ 車輪のベンチと新旧各種台車

一角には、車輪、コンプレッサ、連結器からパンタグラフまで、車両から取り外したと思われる部品の他、工場で使われていたのでしょう、工作機械の旋盤まで並んでいます。

▲ コンプレッサ、旋盤、連結器、パンタグラフなど

次に、ナローゲージの車両をご紹介しましょう。


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