HOME 1/8page 2/8page 3/8page 4/8page 5/8page 6/8page 7/8page 8/8page

トラムで巡るリスボンの街

1998年のリスボン万博(海洋博)で地下鉄が整備されたからでしょうか、市電の路線がずいぶん整理されたそうですが、地下鉄に並行しない市の東西方面を中心に、狭い町並みをぬってまだまだ小さな市電が活躍しています。

     
オープンデッキの観光用特別車       アルファマ地区のカテドラル

道幅が狭いためか、市電のレール幅は3フィートゲージでしょうか、日本のJRよりまだ狭い狭軌です。観光用に、昔の姿に復元したオープンデッキに大きな救助網、広告なしの車も見かけます。

市の中心、ロシオ広場やコメルシオ広場の東側には、リスボン大地震にも耐えて残った古いアルファマ地区があり、イワシを焼く煙が流れてくる昔からの狭い路地の家の軒先すれすれに、小さな市電が急カーブ急勾配の路線を行き来しています。

     
狭い通りではガントレットになっている       観光客に人気の28系統

28系統の電車に乗り、アルファマ地区を巡ってみましょう。道路が狭く複線の線路を施設できないところでは、ガントレットにしたり、行きと帰りを別の通りにしたり、苦労がうかがえます。その狭い通りに駐車している車が多く、電車はその脇をすれすれに進みます。

サン・ジョルジェ城からみたテージョ川と4月25日橋 中央がロシオ広場 三角屋根がロシオ駅

リスボン大震災にも耐えたアルファマ地区のカテドラルで下車して、丘の上に建つサン・ジョルジェ城に登ります。市電と1日乗車券が共通で使えるバスに乗れば、城の入り口まで運んでもらえます。

リスボンの美しい町並みを一望できるサン・ジョルジェ城は、古代ローマ時代の砦から始まり、ポルトガルを支配したイスラムやキリスト教徒、ポルトガル王家と、時代を超えて政治の中心となってきた場所だそうです。

途中までLRTと同じ路線を高速走行する18系統 更新車は2軸の新型台車

リスボンの市電はワンマンで、2軸単車の旧型車では乗車時に運転手から切符を購入します。1回160エスクード、110円位ですが('99年当時、2006年現在は1.2ユーロ約170円)、地元の人は約半額となる前売り券を持っています。観光客には、市電、バス、ケーブルカーとエレベータに共通で使える1日券が450エスクード、当時は約300円で便利です。

'99年当時の市電の系統は、12、15、18、25、28系統です。番号からみて、以前にはもっと多くの系統があったのでしょう。観光客がよく乗る路線は、古いアルファマ地区の迷路のような通りをいく28系統と、ベレン地区に向かう15系統です。

駐車違反車が歩道を占領する脇を走る25系統 トラムの車内 出入り口付近がロングシートの他はクロスシート

'99年当時、リスボン市電の2軸単車には、窓の周りが白い500番台のナンバーをつけた車と、窓の周りが黄色の700番台の番号をつけた車があります。700型(オープンデッキの観光用復元車も)の集電装置は1本のトロリーポールのみ、両運転台で、昔からのブリルタイプの台車に釣かけモータの音を響かせていますが、あまり見かけません。

吊りかけモータの未更新車の集電装置はポールだけ 700番台の未更新の2軸車にLRTが続く

主力の500型は、車体は古いのですが走行機器を更新したようで、後部の運転台は撤去、カルダンドライブの新型台車を履き、平坦線では高速で滑るように走ります。単車特有のピッチングもなく乗り心地は良好です。

また集電装置には、ポールの他にシングルアームのパンタグラフも装備し、12系統と28系統ではポールを、18系統と25系統ではポールを降ろしてパンタグラフを使用しています。

 


リスボンのLRT

テージョ側に面した市の中心、コメルシオ広場から西へ、発見のモニュメントや世界遺産のジェロニモス修道院のあるベレン地区に向かう、川沿いの平坦な路線を走る15系統だけは、ドイツシーメンス製の固定窓冷房付き、VVVF、前後の台車部分を除き低床のLRTです。

LRTはベレンへ向かう15系統だけ コメルシオ広場のLRT 大きな赤いKitKat号

LRTは、併用軌道でも直線では70km/hまで速度を上げます。運転台が独立し、運賃の収受は乗客任せのヨーロッパ方式。車内の券売機には観光客が乗るためか、ポルトガルでは珍しい英語の表示もあります。

     
LRTの女性運転手 左手にワンハンドルマスコン       LRTの車内

 


リスボンの地下鉄

リスボンの地下鉄は、1998年に開催されたリスボン万博(海洋博)にあわせて整備され、それまでの1路線から現在では4路線になりました。ステンレス車体の2両編成で運転されています。

地下鉄ガイヴォタ線 ステンレス車体2両編成 地下鉄ジラッソル線のカラフルな車内

現在も工事が続けられ、サンタアポローニャ駅まで達すれば、リスボン市内の国鉄の3つのターミナルが地下鉄で結ばれることになるそうです。

 


ポルトガル民謡ファド

ポルトガル最後の夜は、リスボン市内にあるファドを聴かせるレストランに行きました。ファドは19世紀に生まれたポルトガルの民族歌謡で、スペインのフラメンコと同様に、レストランで食事を食べながら聴くのが一般的です。

     
ファドを聴かせるレストラン       ギターに合わせて歌う

ポルトガル・ギターに合わせ男性や女性の歌手が一人づつ、2〜3曲歌っては交替していきます。夜遅くまで続きますが、明日の早朝便でリスボンを発たねばならないので、後ろ髪を引かれつつレストランを後にしました。

 


旅のヒント

ポルトガルでは、他の西ヨーロッパ諸国に比べ、日本人観光客をあまり見かけません。リスボンの場合、ロンドンのバッキンガム宮殿や大英博物館、パリのルーブル美術館や、ローマのバチカン等に匹敵する、目玉になる観光施設がないこと、日本からの直行便が就航していないことなど、日本人にとって魅力に乏しいと思われているのかもしれません。

また、列車にしても、その後Alfaがイタリア製の振り子式ペンドリーノになったとはいえ、ユーロスターやTGV、ICEやAVEのような華やかな高速列車はありません。

ポルトガルはヨーロッパの田舎です。のんびりとした旅を楽しむには最適です。路線は縮小されたとはいえ、リスボンやポルトには、クラシックなトラムが現役でがんばっています。

そのほか、気候が良い(夏は暑いが乾燥していて日本より過ごしやすいそうです)こと、魚介類をはじめとする食べ物がおいしいこと、物価が安いこと、治安が悪くないことなど、観光客にとって安心して訪れることのできる国です。

カステラがポルトガル語からきた言葉(お菓子ではなく城を意味するカステーリョが意味を間違えて伝わったという説が有力です)ですが、最中のルーツもポルトガルで見つけました。

改訂版の執筆段階で、すでに訪問から7年が経過してしまいましたが、私にとってリスボンは是非もう一度訪れたい都市の上位にランクしています。

1999年 3月旅
1999年11月記
2006年 4月改

 


お役に立つリンク集

これからお出かけになる方や鉄道ファンの方に役立ちそうなリンクをそろえました