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ビーゴ駅に到着

スペイン国鉄の新しいディーゼルカー3両編成、ア・コルーニャ発のメディアディスタンシア(MD)は、午後の早い時間に終着駅ビーゴに到着します。頭端式のホームを持つ駅には多くの側線があり、MDの他に貨車や電気機関車を先頭にした夜行のホテルトレイン、タルゴも留置されています。

スペイン国鉄メディアディスタンシア スペイン国鉄タルゴ
ビーゴ駅側線のメディアディスタンシア 隣の側線にはタルゴが停車中
スペイン国鉄タルゴ スペイン国鉄メディアディスタンシア
夜行タルゴのホテルトレインとメディアディスタンシア メディアディスタンシアから下車した乗客

隣のホームには、黄色と白の車体にポルトガル鉄道CPのマークが付いたディーゼルカーが停車しています。午前中にポルトガルのポルトから到着して、今夜またポルトに戻るまでここにいるのでしょう。

ビーゴ駅から歩いてホテルに向かう途中でちょっとしたトラブルが発生。駅から5分程度のホテルまでの一本道、あらかじめグーグルマップのストリートビューでシミュレーションしてあったはずなのに迷ってしまいました。この付近かなと思って、客が並んでいるお菓子屋さんにネット予約のバウチャーを見せて聞いてみましたが、英語が通じないのか無視されてしまいます。

ポルトガル鉄道ディーゼルカー
隣のホームにはCPマークのポルトガル鉄道の車両が留置 カラフルなビーゴ駅舎

店の表の通りで若い男性をつかまえてホテルのバウチャーを見せて聞いてみると、彼は英語が話せます。私の持っていたグーグルマップのプリントがわかりにくいと言って、裏に目印の教会を入れた地図を書いてくれます。何故か全然違う方角に来てしまったと思いながら“グラシアス”と礼を言ったら、“アリガトウ”と返ってきました。彼は、一時期大阪にいたことがあるのだとか。

教えてもらった教会から先の道は急な上り坂。汗だくになりながらやっとたどり着いたホテルのフロントで道に迷ったと言ったところ、3ヶ月前に駅が別の場所に移転したのだとか。そういえば、先ほど道を教えてくれた彼も、ニューステーション、オールドステーションなどと言っていました。

※ 2012年6月段階では、google mapではビーゴ駅の移転がまだ反映されていません。Yahoo mapやBing mapでも旧駅がRenfe Vigoと表示されていますが、その北側にVigo Puerto(ビーゴ港)の駅名があるところがRenfeの新しいVigo駅です。

 


ビーゴ市内へ

ホテルでしばし休憩の後、再びビーゴの市街地に向かいます。坂道で振り返ると市街地の中腹に、屋根が撤去され骨組みだけになった旧ビーゴ駅のプラットホームが見えます。

市街地の中腹に旧ビーゴ駅のホームあと タコのオブジェ?

海岸沿いに漁港の方に行くとヨットハーバーがあり、タコのオブジェに誰かが座っています。大きなショッピングセンターもありますが、今日は日曜日でお休みのため閑散としています。その前の錨のオブジェが、大西洋に面するビーゴがスペイン有数の港町であることを示しています。

ヨットやプレジャーボート ショッピングセンター前の錨のオブジェ

海抜0mの海岸から市街地を抜けて、高台にある市役所の脇から城塞跡のカストロ城に登ってみることにしました。クルマでかなり高いところまで行ける道がついているのですが、徒歩だけで登ると坂道や階段がきつく、大汗をかいてしまいました。

カストロ城の登り口 カストロ城の中腹から見たビーゴ湾

頂上には、城壁が残りその中は公園になっています。ここからは、ビーゴの市内地とコンテナターミナルや造船所、漁港に停泊する多くの漁船、ビーゴ湾に浮かぶ養殖筏から、はるか大西洋に沈みゆく夕陽まで、絶景をのぞむことができます。

コンテナターミナルや造船所 夕陽の手前の漁港に大型の漁船群

カストロ城から、漁港の裏手にあるペスケーロ地区に降りてきました。旧漁師町のこの地区には魚介類を食べさせるレストランがあるとのことで行ってみたのですが、日曜日のためかどこも閉店。

仕方なく、ポルタ・ド・ソル(Porta do sol この地方の言葉のガリシア語。スペイン語ではPuerta del Sol太陽の門。微妙に違います)から旧市街を旧ビーゴ駅に向かう道を通ってホテルに戻ります。途中から歩行者天国になっていて、ほとんどの店が閉まったいるにもかかわらず多くの人通りがあります。

     
夕刻のポルタ・ド・ソルを行く市内バス       夕刻の歩行者天国の人出

 


再び夜のビーゴ駅

暗くなってから、夕食のレストランを探しに出かけます。ホテルの近くのバルにそこそこ客が入っていたので様子をうかがってみたものの、ろくなつまみはなさそうなのでパス。市街地に開いているカフェはあるものの、さまよっているうちに駅まで来てしまいました。ホームには、ア・コールニャ行きのメディアディスタンシアと並んで、昼間から同じホームにいたのでしょう、19時37分発のポルト行きがエンジンをかけて発車を待っています。

ビーゴからポルトへの列車は、朝と夜に1本ずつ。わざわざビーゴに泊まる計画を立てたのは、翌朝のポルト行きに乗るためです。この他にスペインとポルトガルを結ぶ列車は、マドリードとリスボン及びフランス国境に近いスペインのイルンとリスボン間の夜行列車各1往復だけ。明るい時間帯に国境を通過するのはビーゴ−ポルト間の朝の列車だけです。

スペイン鉄道ビーゴ駅 スペイン鉄道メディアディスタンシア
夜のビーゴ駅 ア・コルーニャ行きのメディアディスタンシア

実は、出発前にホテルの予約まで済ませた段階で、ネットサーフィン中に、この列車が7月で廃止されたとの新聞記事を引用した英文のブログを見つけました。スペイン国鉄やポルトガル鉄道ホームページでの検索では、自国内の最終駅までの時刻は出てくるのですが、国境をまたいで走っているのか確認できません。ヨーロッパ全土の検索が可能なドイツ鉄道DBのホームページでは、途中で列車番号が変わるもののビーゴからポルトまで各停車駅の時刻が表示されますが、他国のこととて情報が最新でない可能性も否定できません。

結論から言うと、2011年11月段階でビーゴ−ポルト間の国際列車は運転されていました。ポルトガル国鉄のホームページをポルトガル語で検索して、ネットで英語に翻訳したところ、ポルトガル国鉄が直通列車のスペイン国内の部分の廃止をスペイン国鉄に通告したところ、スペイン側が応分の費用負担をすることを認めたため運行を継続することになったのだとか。

ちなみにビーゴ−ポルト間には、1日に数往復(土日は1往復のみ)のバスをスペインのバス会社が運行しています。

ポルトガル鉄道ディーゼルカー
発車を待つポルト行き国際列車 やっと見つけたレストランで夕食

ビーゴ駅に来たついでに、窓口でメモに日時と行き先を書いて見せて翌朝のポルトまでの乗車券を買おうとすると、何故か女性の駅員は売ってくれません。理由を尋ねても返ってくるのはスペイン語(ガリシア語?)だけ。途方に暮れていると、隣の窓口の男性の駅員が一言“セイムデイ”。セイムデイ=same day=同日。明日買えということなのと英語で聞いても、返ってくるのはもう一度“セイムデイ”。あとは無視。

諦めてレストランを探しに街に戻ります。やっと見つけた一軒で、店の外に掲げた写真の中からピーマンの肉詰めらしきメニューをデジカメに撮って見せて注文したところ、主人に表の看板の所まで連れて行かれ、写真を指さしながらこれはできないがこちらなら可能と言っているらしい。この際、食事にありつければ何でもとOKしたところ、目玉焼きの下にはポークソテーが乗ってきました。ビールのお通しはにオリーブです。

 


ポルトガルに向けて出発

11月のビーゴの日の出は8時半頃。真っ暗な中、人通りのない通りを駅に向かうのは危険かもしれないと思い、ホテルのフロントにタクシーを呼んでもらいます。1€のチップを渡したところずいぶん喜んで、荷物をタクシーまで運びトランクに積み込んでくれました。

駅の窓口で、ポルトと言って昨夜のメモを見せたところ、駅員がゴソゴソ箱の中を探して、英文の書かれた1枚の紙を見せます。それによると、ここではスペイン側の最終駅までの切符を売るから、その先は車内で車掌から買うようにとのこと。OKすると、トゥイまでの切符が出てきました。スペイン国鉄では、近距離切符は乗車当日しか買えないようです。

ビーゴ駅区内のカフェ エスプレッソとクロワッサン

やれやれ、やっとこれでポルトガルに行くことができます。まずは駅構内のカフェで、エスプレッソとクロワッサンの朝食です。

ホームに出ると、ディーゼルカー3両編成のメディアディスタンシアの他に、4両編成の電車のアルビアS120も停車しています。この車両は、広軌と標準軌の間を直通する可変軌間の電車です。

スペイン鉄道可変軌間の電車アルビアS120 ポルトガル鉄道ディーゼルカー
可変軌間の電車アルビアS120 ポルト行きの国際列車の乗車

その隣では、ポルトガル鉄道のポルト行き3両編成のディーゼルカーがアイドリング音を響かせて7時36分の発車を待っています。ドアの脇に1と書いてあるので1等車かと思って、2と書かれた隣の車両に移動したのですが、車内の造作は全く同じです。3両目は3で、号車番号でした。紛らわしい。

この車両、ポルトガル鉄道がスペイン国鉄から購入した中古車と思われます。中央の肘掛けに傾斜がつく転換クロスシートは、引き出し式の灰皿やミニテーブルはありませんが、袖の部分の仕切の形状も含め、初期の0系新幹線のシートにそっくりです。シートピッチは0系新幹線より広く、バケットタイプのクッションも含め座り心地はJR九州のキハ31に残る新幹線のシートより良好です。ただ、窓割りとシートピッチが合わず、横が壁に面した個所も多数。

ポルトガル鉄道ディーゼルカー
どこか0系新幹線を思い起こさせる転換式クロスシート スペイン最後の駅トゥイ

列車はまだ真っ暗な中3両にわずか3人の乗客を乗せて、定刻にビーゴを発車して北に向かいます。各駅に停車して、若干名の乗客が乗ってきます。どこかの駅でスイッチバックしてア・コルーニャ方面の北に向かう線路と別れて、南のポルトガル方面へ方向転換するものと思っていましたが、そのままの向きで線路がぐるっと180度回って向きを変えたようです。

やっと夜が明けてきた頃、スペイン最後の駅トゥイに到着します。ここまでの間、車掌さんの検札はありません。トゥイ駅にやってくる列車は、ビーゴ-ポルト間の1日2往復だけ。立派な駅舎はありますが、駅員でしょうか国鉄職員が一人だけ。この駅からは誰も乗って来ず、列車はわずかな乗客をのせただけで国境の鉄橋に向かいます。


朝靄の中スペインからポルトガルへ国境の川を渡る国際列車の車窓

立ちこめる朝靄の中、スペインのトゥイから国境のミーニョ川を渡ってポルトガルのバレンサに向かう国際列車の車窓をご覧下さい。