HOME  1/2page  2/2page


“ポルトガル ポルトトラム博物館”

ポルトガル第二の都市ポルトに、エレクトリーコと呼ばれる3つの系統のトラムの路線があります。運転されている車両は、世界遺産ポルト旧市街にふさわしい、クラシックな2軸の単車です。ドウロ川に沿って走る1系統と、旧市街から急な坂道を降りてくる18系統の接続地点に車庫があり、隣接してトラム博物館が設けられています。

▲ トラム博物館前の1系統のトラム  現役の営業車 2011/11

ここには、車庫の建物を改装した中に、ポルトのトラムの歴史を今に伝える車両が保存展示されています。各車両には、ポルトガル語に加えて英語の説明もあり、親切な展示です。火曜日の午後に行きましたが、滞在中訪問客は私一人だけ。

▲ トラム博物館 右は車庫

ラバ(雄ロバと雌馬との雑種)の牽く(と説明に書いてあります)トラムカー8号は、英国の Starbuck Car & Wagon 社が1870年代に製造したものです。

▲ 8号は鉄道馬車

8号は、屋根の造作や上辺が丸いドアや飾り窓、模様入りガラスなど、優雅なつくりの車両です。動力はありませんが、デッキにはハンドブレーキのハンドルが着いています。停車の合図でしょう、デッキのベルを鳴らす紐が車内を通っています。

▲ オープンデッキの8号

オープンデッキのトラム22号車も8号と同じ英国の Starbuck Car & Wagon 社製の馬車でした。ポルトのトラムの電化により1895年に電車に改造されました。

▲ 鉄道馬車を電車化したトラム22号

22号の車内はロングシート。椅子の脚が凝っていますね。側窓は下降式で、8号のような飾り窓はありません。

▲ 22号の車内

窓ガラスのないオープンタイプの100号の車内はクロスシートで、デッキの席を除き椅子の背がぐるっと回転して座る方向を変える構造のようです。Cross Bench Car というのだそうで、少なくとも2両はあって夏期に運行していたとのことです。1928年の車庫の火災で焼失したものを、67年後の1995年にポルトで復元したレプリカです。

▲ オープンタイプの100号

オープンデッキのトラム104号車は、19世紀末から20世紀のはじめに英国の Starbuck Car & Wagon 社で製造された車両のレプリカで、1997年にポルトで製造されています。台車は米国ブリル社製。

▲ オープンデッキの104号

大きな側窓のオープンデッキのトラム163号車は、20世紀の初めの米国 John George Brill 社製。ベスチビュールの取り付け等の改造が行われて使用されていたのでしょう。1992年から93年に、ポルトで当初のスタイルに復元されたのだそうです。

▲ オープンデッキの163号

909年導入の、ベスチビュールが付いてポルトで現役で活躍するトラムとよく似たデザインになった247号は、英国の United Car Company 製のため British Car と呼ばれていたのだが、1925年のオーバーホールによって多くの特長は失われたとされています。展示車両は下の250号とよく似たスタイルなので、このとき車体を新造してのせ換えているのかいるのかもしれません。

▲ ベスチビュール付きの247号

1250号は、261号までの同型車12両が1927年と翌年にポルトで製造されてたトップナンバーです。このシリーズは、1950年代末にイタリアの Companhia Generale di Ellectricita のモーターを装備したことから、Italian Cars と呼ばれているのだとか。

▲ 現役の車両と同じスタイルの250号

その車内は、デッキ付近のロングシートを除くと転換式のクロスシートになっています。現役のポルトのトラムは、シートがビニール張りで通路をはさんで2人がけと1人がけが並んでいますが、基本的には同じシートで同じ配置です。

▲ 250号の車内は転換式のクロスシート

丸屋根の269号はボギー車です。首都リスボンでLRTの導入により現役を引退したボギー車によく似ていますが、この車両だけ説明を書いた板がなく、よくわかりません。

▲ ボギー車269号

269号のボギー台車は、車輪径の異なるマキシマムトラックです。モーターの付いた車輪により多くの重量がかかるようにとの設計だと思われますが、急な坂道の多いポルト旧市街の路線では必須だったのでしょう。

▲ 車輪径の異なるマキシマムトラック

近代化された大きな窓を持つ288号は、1928年にベルギーの Societe des Ateliers de Construction de Etablissements Familieureux から導入された280〜289号まで10両のうちの1両です。ベルギーから来たためBelgiansと呼ばれ、1928年の車庫の火災で焼失した30両の代替として入線しました。

▲ 近代的なボギー車288号

今もリスボンの街中を走る2軸単車によく似たシングルルーフの315号ですが、1929年と30年にポルトで製造された300〜315号、16両のラストナンバーです。リスボンのトラムに対して側面の窓の下辺が低く、ガラス越しに優雅な飾りの付いた転換クロスシートの肘掛けがよく見えます。

▲ シングルルーフの単車315号

夏期にはこの大きな窓ガラスを取り外して運用し、車内で喫煙も可能だったことから Smoking Car と呼ばれたそうです。側窓上のベンチレーターが珍しいですが、シングルルーフになっため、ダブルルーフ側面の明かり取り兼換気窓の代わりに設置したのでしょうか。

▲ 315号の側面 車内は転換式のクロスシート

315号が引き連れる付随車18号は、1934年にポルトで製造された18〜20号まで3両のトップナンバーで、1966年まで使用されました。315号とよく似た車体ですが、側窓上のベンチレーターがありません。この車両も315号と同様に、夏期は Smoking Car でした。

▲ 付随車18号

四角い箱の373号は、ポルトの現役のトラムより近代的な外観です。1947年と49年にポルトで製造された、350〜373号まで24両のラストナンバーです。系統番号の表示位置が窓の上から下に変更になりました。ヨーロッパのトラムに多い片運転台でドアも進行右側だけ。ループ線で折り返す系統専用ですが、現在のトラム路線は3系統ともループ線がない終点があるためこのタイプの車両は使えません。

▲ 四角い箱の373号

進行方向が固定のため、373号の車内のシートは前向きに固定です。板張りのパイプ椅子の簡素な作りです。ドアが片側にもかかわらず、運転台は中央。

▲ 373号の車内

373号が引き連れる付随車の25号も同じ車体ですが、少し古く1940年製で、25号と26号の2両だけ。付随車として使用された期間は短く、電動車に改造されて活躍し、1990年にオリジナルの姿に戻されたそうです。

▲ トレーラー25号

相変わらずの2軸単車ですが、スマートなデザインになった500号は、1951年にポルトで最後に製造されたトラムです。やはり片運転台で片側ドアですが、自動ドアや電鈴、運転士席や車掌席の椅子など、当時の最新の技術が導入されています。

▲ スマートな500号

車内は、前向きの一方向のクッション付き、ビニール張りのクロスシートが並んでいます。後部の車掌席には、大きなハンドブレーキのハンドルが見えます。

▲ 500号の車内はクロスシート


次へ戻る