“ドイツ フランクフルトのリンゴ酒電車”

ドイツ経済の中心、フランクフルト。市内には、縦横にシュトラッセバーン(路面電車・トラム)が路線を巡らせ、新型の低床連接車が市民の足として活躍しています。そんなトラムの路線に、土日と祝日の午後、赤い車体にイラストをまとった古い電車が走ります。

▲ 動物園前のループ線で 回送電車が方向転換 2011/5

方向幕には、“Ebbelwei Express”。英語にすると、“Apple Wine Express” リンゴ酒電車です。始発は、シュトラッセバーンと地下鉄Uバーンが接続する“Zoo” 動物園前。13時30分の始発電車を待っていると、2軸単車を3両連ねた赤い電車が回送で現れます。

▲ リンゴ酒電車が動物園前の電停に入線

動物園前のループ線をぐるっと回って方向転換して停車。ここで乗れるのかと思って乗務員に聞くと、動物園前の停留所で待つようにとのこと。一般の電車が行ったあとに、リンゴ酒電車が入線します。先頭が電動車で、付随車を2両連結しています。もちろん先頭車に乗車。

▲ リンゴ酒とおつまみのミニプレッツェル

車内は、通路をはさんで4人がけと2人がけのボックスシート。窓際にはテーブルがあり、ボトルやカップを立てる穴が開いています。運転士の他、各車両に1人ずつ車掌が乗務していて、発車すると切符を売りに来ます。乗車賃とリンゴ酒が1本におつまみが付いて6ユーロ。子供料金はリンゴジュース付きで3ユーロ。700円のフランクフルト市内巡りが始まります。

 ▲ リンゴ酒電車の車内の様子

このリンゴ酒電車は方向幕にはExpress(急行)とありますが、 各駅停車。日本にあるビール電車と違って、誰でも、どこから乗ってどこで降りてもOK。もちろん予約は不要。ただし、満席の場合は立ち飲みになります。動物園前発車時点では空いていましたが、旧市街の旧市庁舎のあるレーマーで大勢乗ってきました。車掌さんは大忙し。動画で車内の様子をご覧下さい。

▲ メッセ前のハンマーリング・マン像のところでUターン

やがて車窓に、ドイツ鉄道のフランクフルト中央駅が見えてきます。その先、メッセ(見本市)前のループ線で方向転換。動物園前もメッセも定期路線の折り返し系統はなく、リンゴ酒電車専用のループ線のようです。メッセでは、ハンマーリング・マンという名の二次元の巨人が、一年365日、右手のハンマーをゆっくりと振り下ろして、左手にに持った板を叩き続けています。

▲ 車窓にDBドイツ鉄道フランクフルト中央駅

リンゴ酒電車は再びフランクフルト中央駅前へ。ここから乗った人は満席のため立ち飲みです。ポイントを切り替え、マイン川にかかる橋を渡ってフランクフルト南駅方面に向かいます。

▲ マイン川を渡る車窓に高層ビルと大聖堂の尖塔

南駅の手前でポイントを渡って方向転換。再びマイン川を渡る車窓には、高さ300mの高層ビルと並んで大聖堂の尖塔がそびえています。

 ▲ リンゴ酒電車の運転台

動画で運転台の様子をご覧下さい。運転士の左手にはコントローラ。日本とハンドルのかたちが違いますね。ハンドルの逆転で、停止寸前まで電気ブレーキを使用し、最後は右手のハンドブレーキでブレーキシューがレールを押さえて停止しているようです。

▲ 動物園前に戻ってきたリンゴ酒電車

こうして、55分でフランクフルト市内を一周したリンゴ酒電車は、終点の動物園前に戻ってきます。でも、多くの乗客はまだ車内に残ったまま。リンゴ酒電車はループ線で方向転換して、次の発車時刻まで木陰でしばし休憩。乗務員も乗客も、車外に降りてくつろいでいます。

▲ ループ線で発車時刻までしばし休憩

やがて発車時刻になり、乗客が車内に戻ると、リンゴ酒電車は次の乗客を乗せに動物園前の停留所に向かいます。オンシーズンは、2編成を使用して、午後から夕方まで、35分間隔の運行です。

 ▲ リンゴ酒電車が動物園前のループ線から発車

運行日や時刻等、詳細は http://www.ebbelwei-express.com/ で確認してください。